柴田 多恵
「そよかぜのように街に出よう」より転載
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昨年の10月は、オリンピックが開催され、続けてパラリンピックもあって、にぎやかだった。私はこのパラリンピックがどうも好きではない。健常者と同じようなやり方、つまり「競う」という形ではなく、障害者は障害者にふさわしい形でスポーツを楽しむことはできないのだろうかと思うからである。 |
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二年前、私が職業安定所の専門援助部門にいたとき、よく職員さんのこんな言葉を耳にした。「世の中、不景気で、健常者だって就職は厳しいんです。障害者の方はさらに困難な状況です」と。求職のために、窓口に相談に来ている障害者の方も「そうでしょうなあ」と。私もそんなものだろうなと「納得」していた。 |
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いま書いたようなことを私たちのポリオ会で話すことも時々ある。みんな「ほんまやねえ」と言いながら、それで終わってしまう。障害を持った私たちだから気がつく大事なこと、例えば、ある場所に椅子を一つ置いてもらうと靴がはきやすいのに・・・なんて小さなことも、「まあ、私がちょっと我慢すればいいのだから」とか、「言うてもいやな顔をされるだけだし」とかでお茶を濁してしまう。 |
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どうせ分かってもらえまいと思っても、言ったらしんどい思いをするだけだと思っても、伝えなくては始まらない。言えば何らかの反応がある。それがたとえ最初はとんちんかんな回答であっても、伝えなくては何も始まらない。何も分かってもらえない。 |