柴田多恵
「そよかぜのように街に出よう」より転載
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「柴田さん、足、だいじょうぶ?」毎月必ず、同じ人から同じ場所でかけられるこの言葉。私はいつも胸にジーンとくるのです。 |
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私は毎月第四水曜日に、知的障害者の人達と一緒に料理を作っています。職安に勤めていたとき知り合った訓練センターのA先生からのお誘いで始めたもので、もう2年ぐらい続いています。
A先生は、働く知的障害者のアフターファイブおよび休日がより充実したものになるようにと、
バスケット、ソフトボール、サッカー、ハイキング、書道などさまざまな活動の場を設けられ、
「フレッシュクラブ」と名前をつけて運営してこられたのです。 私も何度か参加させていただきましたが、職場を訪問した時とはまったく違う彼らの生き生きとした顔を、
そこに発見することができました。彼らが職場で働きつづけられるように支援するためには、
職安から出向いての定期的な定着指導も必要だけれど、それとは別に案外こんな楽しみも彼らの仕事の活力を支えているんだなと、
当然といえば当然なことなのに、えらく感激したことを今もしっかり覚えています。 |
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第四水曜日の12時半、地下鉄の名谷駅に集合。近くのスーパーで、予定のメニューにあわせて買い物。
どこに何があるか、探すのも一興です。余っても一盛りのトマトを買うほうが得か、2個だけ買うほうが安いかなど、 しばし考えたりもします。そして、皆で近くの福祉センターに行き、いざお料理の始まり、始まりとなります。 |
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さて、「だいじょうぶ」の一言は、皆で買い物をしているとき、 M君が毎回同じタイミングでいってくれる言葉なのです。駅からスーパーまでの道を歩きながら、
私の歩き方が頼りなくて気になりはじめ、その場所にきたときに我慢できなくなって、
口に出してくれるわけです。彼の口調からは、私を心配している掛け値なしの本当の気持ちが伝わってきます。 |
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